始まりと終わりの物語

そこには始まりも終わりもなかった。まず、神が始まりと終わりを作って名付けた。

始まりは「生」で、終わりは「死」。

(わりと上手くできたんじゃんねーの?いひひ)神はそれを眺めては、居丈高のご満悦だった。時折、そっと雲の隙間から、地上を眺めていると、人は、それよりも小さな始まりと終わりを無数に作り始めた。労働が生まれると、日が昇り、日没まで、学校が作られると、一学期の始まりと終わりが、授業には45〜90分の始まりと終わりが。就職、退職、結婚、離婚、様々な始まりと終わりが、人の一生に盛り込まれていく。終わるとき、人はなぜか泣くようであった。

(おいおい)

神は思うが、しばらく様子を見ることに。

しかし、人が、一分の単位で多くの人をいっしょくたに管理する始まりと終わりを作り始めた時、神はさすがに(ヤベーんじゃね?)と考え始めた。その後急速に始まりと終わりは、より短く、細切れになっていく。あれよあれよという間に、秒単位で管理される世界を眺めていると、賢者ほどその単位を細切れにしてしまうが、実際、細切れに感じているのは愚者であるという点は、神を多いに愉快な気持ちにさせた。

(もう少し放っておくか・・・)

神はめんどくさがりだった。

そうして、人が1万分の1秒を操る機械を発明した時でさえ、神は興味を持つこともなく遊び呆けていた。開発に心血を注ぎ、世間で言われるような一般的な幸せを放棄した、発明者の男は、地上で思っていた。(なぜ、俺はこんなに頑張ったのに、思ったような幸福が訪れないのだ) 苦々しい想いを拭いきれない日々が続く。ある日、それを下級の神が見つけて神に報告した。

遊びを中断された神は、下級の神を叱りつけ、なにも意地悪をしている訳ではない、視野に入らないだけだ、と答え、すぐにここから出ていくように、お前は役職を一つ下げるからそのつもりで、と言い渡した。

下級の神は思い付く限りの罵詈雑言を神に投げつけながら、護衛の神に連れ去られようとしていた。

「あんたは遊んでばっかで、ろくに仕事もしやしねえ、俺の方がよっぽど働いてるのにファッ×シッ×マザファッ・・・!」

その時、まばゆい一筋の光が地上からまっすぐに立ち昇り、目にもとまらぬ速さで雲を貫き、神と下級神の間を貫き、まだその上へと突き抜けていった。神は下級神に言った。

「お前は運が悪い。これは1万分の1秒のそのまだ間に入り込み、永遠を見つけた人間から立ち昇った光だ」

神はすぐさま天使を呼び集め、祝福するように命じた。天使は直ちに祝福のため、地上に降りた。下級神は、お前の態度には納得いかねえ!と思いつつも、先程の光の鮮やかさに心を奪われていた。このように鮮やかさに立ち昇る光を見たのに、忘れ得ぬできごとだったのに、なぜ、自分が不運なのか、下級神にはよくわからなかった。しかし、下級神は二度と神に会うことはなく、その理由は聞けず終いだったとさ。


おわり。