ずっと求められているものはどういうものだろうと考とって。うっとこの母は、すごく怖い人やって、恐怖で子供をコントロールしててんな。もちろんそういうときばっかりではなかったけど、大体そうやった。だから、家はとても怖いところやった。どうしたら怖くないのかをずっと考えてて、それをこなしとってんな。私は優等生やったから、少しレールを逸れてしまったときの母の憤りみたいなんはすごかって。今でも覚えてるんは、中学校の一年のときに、マニキュアを買ってきてん、友達と。お店で並んでる中から、散々迷って、好きな色を選んで、お小遣いで買ってん。かわいいやん。マニキュア。そしたら、家に帰って二階の部屋に上がるときに「何を買ってきたん?」て声をかけられて、私が(怖い)と思って階段を駆け上がったらヒステリックになにかを喚いている母に、力ずくで引き摺り下ろされてん。大人になってちょっと冷静になってみると、どう考えてもそれは愛とは違うし、そういう家ではな、悲しいことに憎しみも一緒に育つん。


もう母はそんなことなんて覚えてないかもしれんなぁ。そういうもんやん?そのときのストレスみたいなんを解消したらそれでよかったんやと思う。もちろん、母は母でいろいろとストレスがあったんやと思う。それはすごいわかるし、でも私が何に傷付いたとか、そういう気持ちを持ってしまったこととかは今更もうどうしよもないことやん。


ほんで、家と同じで、学校にいれば、学校で評価に繋がるものは見えとって、それをやってきたし、組織にいればその組織でのニーズに応えて、高評価を得てきてんな。で、いろいろあって、まぁ、みんないろいろあると思うけど、作曲をやろうと思ってん。


で、ちっちゃい頃は自分の好きなものがいっぱいあってん。それが、いつの間にか、自分の好きなものがわからんなってんな。作曲を始めてから、足りないものはいっぱい見えとったけど、自分の好きなものはいっこも見えへんかった。私は作曲をはじめてからすぐにいろいろ声をかけていただいて、今まで味わったことのないプレッシャーがあって、レーベルの望んでいるもの、リスナーの望んでいるもの、今売れているもの、いろいろ気を配ってそんな中で最適な選択をしようとしてた。家とか学校とか組織ゲームと一緒やって。最適化して、ニーズに答えるんやって。でもそんなんは誰の心にも届かんよな。それがどっかでわかってたからまったく自信がなかったのんと、私生活がえらいことになってしまって、色んな状況から、無理やって思った。それからずっとずっとこれではあかんなぁという焦燥が続いて、でも日増しにそれは大きくなっていってそれしか残ってないくらいにまでなった。それでも作ってればなにか見えると思ってストックを作っててん。ある意味、なにか見えたよ。数を作るといろんなことが見える。でも、これは、俗に言う、自分を見失っている状態なんかなぁとぼんやりとは感じとったんな。


好きなものがまた戻ってくるとか、想像もできんかったよ。一回失って、それは大人になると自然にこんな感じになるんかなぁとか思ってた。


それを指摘してくれる人もたくさんいてくれたし、でもなんでか、ちゃんと受け入れられんかったよ。特に付き合ってる人が別れ際に涙ながらにそういうことを訴えはるんよな。それがなんでかがわからんのよ。すごくぼんやり聞いてるん。自分のことじゃないみたいに聞いてるん。死ぬだの刺すだの言うんよ。んー、いろんな人が言ってくれること、ちゃんと受け容れられたら、もっと早くになにかを見つけられたと思うし、自分でこれはすごい損やなと思うけど(もっともなこと言ってはるわ)って思うところで終わってしまうんな。ひどい話かもしれんけど(あんたの気に入るようにしてきたやん)とまで思うんよ。綺麗、綺麗にして、隣で笑ってたやんて。なんでも卒なく出来て、お友達にも羨ましがられてて、あんた、調子にのってたやんて。私は男の人との付き合いの中でも、最適化して気に入られるようにしてただけやし、それが悪いことやとは全く思ってなかったし、正直、他のやり方を知らんかってんな。


そんなんやから、作曲もずっと「ここや!」っていうところにたどり着かんのよな。ずっと作ってて、これと比較するといい出来やでとか、ここはすごいテクニック使ってるんやでとか、この転調は某プロデューサーに適いませんと言わしめたんやでとか、そんなんばっかり増えていくんよ。もうな、焦燥は極限やで。


で、結構最近まで、私なんか、いついなくなってもおかしくないよなぁと思っててん。すごい希薄な感じやろ?希薄やでー。すっごい薄っぺらいん。そんな人はな、吹けばふわふわ飛んでいきそうやし、どうにでもなりそうやし。


でもな、今日、さっき、今はそうは思っていないことに気がついた。ちょっと説明するのが難しいんやけど、けして軽快な心持ちとかそういうのではないんよな。自分が自分としてちゃんとここにおるなぁという感じ。


それは、少し前から話し相手になってくれている人のお陰です。それでもまぁ、私はまだひどい女からちょっと抜け出したくらいのもんなんで、その人にとっては、ほんま関わらんほうがいい程度の女なんやろなぁと思う。卒なくお付き合いはできるけど、ほんまそれ以上の愛を見せることとかできんと思う。


でもどっかで人を好きになりたい、なりたいと思ってて、好きなもんを好きっていうと満たされる感じがして、関わることを望んでしまうからやっかいなもんよなぁ。


こういうことを伝えたかった人が何人かいてはって、でもよう言わんかった。自分がひどい人やとか、ろくでもない女やとか、誰もそんなこと言いたくないやん?今日、書こうと思ったんは、あれ、自分ちょっとだけいつもと違うかもしれんと思って、それを書いておきたかったんと、関わり始める人たちに注意を促したかってん(笑)。薄々気がついてる人もおるやろけど、私、ちゃんとしたいねん。今からでもちゃんとしたいねん。