砂漠

砂漠


なにこのそうそうそうそうそうそうそうそうそうそう!!!!感。


軽めの読み物ですが、プロットと人物設定、心理描写が巧みで、あらゆるシーンで「そうそう!!」となります。シリアスに美しくまとめようかと試みて、その後、いや、リアルでそういうことはないだろと考え直し、落としてしまい、それを書き直さないところなど、人柄に好感が持てます。数日前の私の日記のようですね・・・(インディアンアクセサリーについて)。


文中に「軽くて面白いものが受ける」とかなんとかあり、想像するに、編集者さんとも相談しつつマーケットをあらゆる意味で意識した作り、みたいな感じがします。試みは大成功なのだと思うけど、力量から言うと、もう少し伊坂氏が本当に面白いと思って夢中で書けるような題材を扱ってもいいんじゃないかなぁと思いました。と思ったらば、新聞に新刊25万部突破の広告が。これも是非読んでみたいです。


超能力や、麻雀での意識下の蠢きなど、オカルトを軽めに扱っていますが、オカルトってライトに扱うのが難しいジャンルなんですよね。例えば、スティーブンキングが取り扱うそれと比較すると、この小説自体に蠢きを感じるまではいかなかったです。噂話程度に楽しめるといったところでしょうか。その代わり、と言ってはなんですが、日本人独特の心理や、テンポの良いプロットが楽しめます。今ちょっと考えてみたけど、オカルトの蠢きと、軽快なプロットって、そもそも両立が不可能ではないのだろうか。うん。


軽く読ませるにしては、状況説明が過度で不得手なのかなと思う箇所がいくつかありました。赤川次郎さんのようにすぱっと読ませるにはリーマン中間管理職とかやってみるといいんじゃないだろうか。


なんだか小姑のようにちくちく言ってますけど、面白かったです。この人の書くものがまた読みたいなと思う方は少ないのですが、伊坂氏のものは「出たら読みたい」に入りました!


あと、文中に坂口安吾氏の名前がちょこちょこ出てきて、作家さんが、他の作家さんを文中に引用するっていうのは、つまり、相当お世話になったとか、すごく尊敬しているとか、もうある意味勝ち目ないよなと敗北感をかみ締めているのどれかだと思います。私が歌詞に「哲哉さん」て入れるようなもんだよね。それは、相当勇気がいるぞ。・・・ちょっと違うか。


というわけで、某の口からもなんとなく聞いたような覚えのある、坂口安吾氏の著書「堕落論」「桜の森の満開の下」をショッピングカートに入れました。そうそう、伊坂氏の死神の精度も一緒に届きました。これはまだ読んでいないのですが、近く読んでレビューします。


さて、音楽制作のためのインプット期間を設けて新しい作品の為にたーくさん充電するぞーと予定を立て、インプットのリストアップなどして、とっても順調!と言いたいところなのですが、なんか制作も一緒に始まっちゃった。ぼくはもう大変なことになっているよ。><


この本をオススメいただいた legnum 氏に感謝を。この本を読み終わり、読後の清々しさと寂寥を感じながら、ふと窓の外を見あげると、散り始めた桜が風に舞っておりました。開け放した窓からは桜の花びらが入り込み、閉じた本の上にはらりと落ちるではないですか。私はそれに心を重ねてしまい、季節の終りにほんの少し涙したのでした。

なんてことはまるでない。